昭和のファム・ファタール

昭和のファム・ファタール(Femme Fatale)

「ファム・ファタール」とはフランス語で、「魔性の女」という意味です。

日本でも外国でも、ファム・ファタールをテーマにした小説や映画が幾つも発表されていますが、日本において昭和の時代には、実際に「ファム・ファタール」と呼ばれる女性たちが何人かいて、彼女たちは事件を起こしていました。

一番有名なのは、「阿部定事件」です。

妻を持つ吉田という男を愛した定は、ほかにも愛人がいた吉田に対して激しい嫉妬にかられていました。

また、定は性欲みなぎる女性で、吉田に対して一日に5,6回の情事を求めていたといいます。

そんな彼女は、吉田を独占したいために絞殺し、彼の性器を切り取り、逮捕されるまで、大切に保存していました。

彼女は娼婦として各地を転々とし、やがて情事なしでは生きられなくなったといいます。

「阿部定事件」が起きたのは1936年のことですが、それ以降、彼女は「日本のファム・ファタール」の象徴とも見做されてきました。

因みに、男性の浮気に激怒し、男を独占するために殺して性器を切り取るという女性の猟奇殺人は、昭和の日本では相次いで起こっていました。

女性にとって男性性器は、自分の運命を左右する象徴的なものという考え方があったのでしょう。

だからこそ、性器の存在に苦しめられるとそこを切り取り、そのことで男性そのもの独占できると信じるのが、昭和のファム・ファタールの典型であったのかもしれません。

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